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ポルトガルと日本と奴隷

私の専門は日本=ポルトガル交流史ではありませんが、使う史料がポルトガル語のものが多いので、そう思われている方もかなりいるような。

本日、グーグルで「ポルトガル 日本」と検索ワードに入れたら、候補で「ポルトガル 日本 奴隷」というのがありました。
「ポルトガル人が戦国時代の日本で奴隷を購入して、海外に連れ出した」というのは、ネット上ではセンセーショナルな話題になりがちですが、当時の国内・国外状況を考えると、必然的結果なので、「イベリア暗黒帝国が日本人を連れ去る」というイメージで語る必要はないと思います。
日本国内でいう「年季奉公」「下人」「従者」などは、世界史的には「奴隷」のカテゴリーです。
時代劇などでも娘が遊郭に売られる話はお決まりですが、これも「債務奴隷」の一種です。
東南アジア島嶼部では、大陸部から食料品を輸入する代わりに、たくさんの「奴隷」が運ばれていきました。
ポルトガル人はアジアで二束三文で人身売買に関わるのは慣れていましたし、日本でも日本人の「人買い」が売りに来るので、まぁ安いし買うかという感覚だったようです。
もちろん人身売買が非人道的なことであるには違いないのですが、人間が文明を持って以来、「奴隷」的身分の人々が存在しなかった地域・時代はないと思っています。
ポルトガル人の「人身売買」の歴史的事実が騒がれすぎてしまうのは、同時代の南蛮貿易が宣教師と表裏一体という認識がある程度進んでいるからなのでしょうか。
ちなみに宣教師は日本でおこなわれる「人身売買」を止めようとしたのは事実です。まぁ、努力だけですが。

記録に個人名が残りにくいので、南蛮貿易の中の奴隷貿易事体、触れるのがタブーというか、正面から取り組んだ研究は少ないです。
ある学会で、世界的に非常に有名なドイツの東アジア海域史研究の先生が、若手のポルトガル人研究者の奴隷交易研究報告を「そんなものは存在しなかった」と大みえきって批判した現場に遭遇したことがあります。それくらい、認知度が低い問題なのは確かであります。
彼の研究は、奴隷の個人名、国籍、売買の経緯、年齢、買主など個々の事例をデータベース化したものにもとづいたものなので、いずれ誰が間違っていたか分かると思いますが。
ちなみにそのときに、報告者側の擁護発言をなさったのは、「朝貢システム」などの概念で有名な大御所のH先生でした。
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by mihokodesousa1 | 2013-04-30 16:15

長崎郷土史研究者との交流

長崎は郷土史が熱いところです。
地元の郷土史家の間で刊行されている雑誌は貴重な史料の紹介や、地元ならではの興味深い研究の宝庫で、よくお世話になります。
先年の長崎れきぶんぱくでの講演で知り合った宮本次人さんの『ドン・ジョアン有馬晴信』(海鳥社)を送っていただきました。
地元ならではの有馬晴信への想いが随所に感じられる本です。
その最終章で、晴信の遺品といわれる山梨県天目山栖雲寺の十字架を手にする虚空蔵菩薩像について言及されていました。
有馬晴信の研究者の間では有名なようですが、私は恥ずかしながら今まで知りませんでした。
この菩薩画は、長年有馬晴信が、晩年に描かせた自画像とも言われてきたそうですが、2011年に京都大学の吉田豊教授(文献言語学)が、マニ教のイエス像であることを指摘したとのことです。
それ以前に2006年には東北大学の泉武男教授が、景教のイエス像であるとの見解を示されています。
いずれにしても、南宋~元代に寧波を中心に栄えた「寧波仏画」の流れをくむ可能性が高いと言われています。
その後、研究者交流メーリングリストで、非有馬晴信伝来説も説得力あるものが出てきたため、この部分改変しました。
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by mihokodesousa1 | 2013-04-27 22:26

サラディナーサ読んだ。

今日は複数のメディアから取材がありました。近いうちにブログにアップできると思います。
最近、独り言のようなネタばかりで、仕事の話を書いていませんが、本当は激烈に仕事してます。
ブログはちょっと空気抜き的存在になりつつあるかも。

少し前に某雑誌の特集で、「GW中に読める世界史の本」という取材を受けました。3つのジャンルで、一般の人も手に取りやすい世界史の本(流行りのダイアモンドさんあたり)、家族で楽しめるビジュアル世界史、そして世界史に興味がもてる漫画!というジャンルです。

世界史に興味が持てる漫画と聞いて、ベルバラと三国志くらいしか思いつきませんでした。最低3作あげよとのことでしたので、困った。ネット検索すると、どうやら私の研究テーマに近い、フェリペ二世の時代の船乗りの大河歴史漫画が存在する模様。
「サラディナーサ」というタイトルです。名前は前から知っておりましたが、アイユーブ朝のサラーフッディーンの話かと思っておりました。それはそれで読んでみたいけど。
さっそく文庫版を古書で購入。1巻から5巻まで半日で読み終えました。
子どもがおもちゃで遊ぶ横で読みふけり、ダンナが子どもに食事を食べさせている傍でさらに読みふけり、かなり没頭。
主人公は架空の海の一族ですが、以前から興味をもっているジェノヴァのアンドレア・ドーリアの一族がモデルということで、ワクワク。
最初は比較的史実も織り込みながらという努力も見えましたが、後半はフェリペ二世の弟ドン・フアン・デ・アウストリア(主人公の婚約者)がオランダ側で名前変えて生き残ったり、かなり史実と違う展開。
読み終わってから、ドン・フアンは、同時代にポルトガルの王位をめぐってフェリペと争ったプリオール・ド・クラトが混入した人物像だと気づきました。
プリオール・ド・クラトことアントニオは、ポルトガル国王ジョアン三世の弟で皇太子だった時期もあるドン・ルイスの庶子で、母親はコンベルソ(改宗ユダヤ人)と言われています。
世界史に興味をもつきっかけということでは、推薦できる漫画だと思います。
16世紀は日本史も世界史も、群雄割拠で面白いです。
東京大学出版会の広報誌《UP》4月号「東大教師が新入生にすすめる本」特集で、漫画ではない本を推薦しておりますので、こちらもご覧ください。
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by mihokodesousa1 | 2013-04-19 22:07

研究の世界の人間関係

本日、京都周辺で、とんでもないデマが流れていることを忠告されました。
私が故恩師の蔵書を無理に引き取ろうとしているという噂です。
なんとなく噂の経路は察しがつきます。
そのようなことは考えたこともなく、ご遺族とその点、お話をしたこともありません。
ただ、研究者の世界では、恩師が亡くなった後、研究室などを弟子が整理するのは自然なことですし(もちろんご遺族から依頼があった場合に限る)、それは当然ボランティアであって、そこから何か自分のために利益を得ようとたくらんでのことではありません。
本当に、根も葉もないことです。
生前に十分に学恩に報いることができなかったので、お片づけなどで何か役に立つことがあればと思ってはおりましたが、このような噂を悪意的に広められるのは、心外極まりないことです。

このこと以外にも、最近某所で誹謗中傷されたことを知り、芸能界なみの研究世界のドロドロとした一面を目の当たりにしてしまいました。学者って、たまに仙人みたいな人もいるけど、賢そうな顔して腹黒い人もいっぱいいます。そういう話って、ホント、本人の耳に入ってくるんですよね。不思議と。だいたいその原因は嫉妬のようです。嫉妬はされるより、する方がずっと苦しいですから、憐れんでしまいます。
その誹謗中傷を聴いた人たちも、「いい年した身分ある人がそんな感情的になっちゃって」と驚いて、その人の人間性を疑う結果となったとのことでした。
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by mihokodesousa1 | 2013-04-18 17:05

南蛮貿易、大航海時代、マカオ、長崎など


by mihokodesousa1
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