<   2015年 11月 ( 3 )   > この月の画像一覧

書評ではないけれど

現在講義で使っている大橋幸泰著『潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆』の序章が、いまさらながら素晴らしいと思う。本書ではこれまでほとんど明らかにされていない「潜伏キリシタン」の実像に迫るだけではなく、江戸時代の禁教政策も、中央ではなく地方レベルで細かに検証されています。
とりわけ「序章」がすごいと思うのは、これまでのキリシタン史ではおおっぴらに言うことが許されていなかった、ゆえにいまだヨーロッパ中心主義的なおかしな議論に戻されがちな、核心的な「研究史上の問題」を、ソフトかつ鋭く指摘している点でしょうか。
「”隠れキリシタン”の宗教活動が”異端”的な土俗信仰であるとする評価は、キリスト教はこうでなければならない、あるいはこうであるはずだ、などという思い込みによる評価ではないか」(14頁)

16世紀の布教記録にもみられる、キリシタンの土俗信仰(宣教師からみた「偶像崇拝」)の維持は、日本特有の現象ではないし、おそらくキリスト教が紀元後伝播した、ヨーロッパ含むあらゆる地域でみられたものです。教義を指導する側の人間さえも、教える内容を土地の文化と宗教に適応させざるをえなかったという事実は、ある意味普遍的な現象であるといえます。「適応方針」というのは、ヴァリニャーノ独自の思想でも、方針でもないのでしょうが、それを神学上合理的なものに見せかけることに成功し、布教の全体方針として是認させたという点では、彼のルネサンス人としての知識と賢さと、それを生かせる器量のたまものであったということはできると思います。

この点を意識しながら、イエズス会書簡を読むと、今までとは違う読み方ができますし、訳出する上での訳語にも、もっと注意を払わねばならないと自戒します。
[PR]
by mihokodesousa1 | 2015-11-17 14:06 | 日々つれづれ

なんだかすごいブログを発見

岡本大八事件に関して、とりあえずネット上の情報を調べている途中で、なんだかすごいブログを発見。
岩井半次郎 大航海時代のおと
素人とおっしゃいますが、その洞察力は只者ではない!

わたくしも岡本大八事件に関し、「関係者が全員キリシタンであった」ことくらいで、全国的な禁教令へとつながったわけじゃあないと思います。それくらい、家康はもともと認識していたでしょう。岡本大八事件はあくまで口実というか、きっかけに過ぎないのでしょう。その周辺でおこっていたもう少し細かな出来事、これまでの研究史では一行くらい触れられて終わっていたことの連鎖が大事なのだと思います。
しかし連鎖を考察しようにも、同時代の史料では埋められない空白があって、逆に後の時代の編纂書では、その連鎖が自明の事実のごとく記されているので、研究者はそこに踊らされてしまうのです。
[PR]
by mihokodesousa1 | 2015-11-10 13:23

平戸イベント報告

平戸国際フォーラムと巡見を終えて、無事京都に上洛しました。
フォーラムでは、通訳関係で大きな予期せぬ不幸がありましたが、なんとか切り抜けることができました。ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。
生月・山田集落のオラショの実演も聞くことができ、大変感動しました。あの「まいろーやーなー」のオラショを生で聞くと、やはりきゅーっと心に迫るものがあって、400年くらい時空旅行をした気分になります。
その後、山田のカクレキリシタンの方たちと少しお話することができましたが、そのときは舞台の上よりも緊張しました。
明日は外海の枯松神社祭とのことでしたが、残念ながら、東洋史研究会大会報告のため、京都にワープしてきました。
お客さんには今回も、このブログを読んでくださっているという方もいらしてくださり、最近あまり更新していないので、申し訳なく思います。大曲記の作者のご子孫の方で、本日は少しお宅へもお邪魔しました。大変美しい庭園と趣のある日本家屋のお宅でした。また機会があれば、ゆっくり平戸の歴史の話を伺いたいと思います。
生でキリシタン文化に触れると、気持ちを新たに引き締めて、史料から聞こえる声、今でも感じられる歴史の証を、真摯に受け止め、「グランド・セオリー」や「史観」に縛られることなく、その時代の本当の空気みたいなものを感じられる歴史の語り手になりたいと、思うのでした。
[PR]
by mihokodesousa1 | 2015-11-02 21:36 | 研究の旅

南蛮貿易、大航海時代、マカオ、長崎など


by mihokodesousa1
プロフィールを見る
画像一覧