あけましておめでとうございます

イベリア出張から帰って、頭の中が日本へなかなか戻らないままに、今年3月刊行の『イエズス会日本書翰集』3巻の再校校正にかかりきりになり、一応年末に作業を終えました。
そして昨日、ユーラシア科研での研究報告だったので、お正月も研究モードをオフにできないまま、オン/オフ切り替えが得意な私としては、若干キショクノワルイ年明けを迎えました。

昨日、報告は無事に終わったので、かなり緊張が緩みました。今回は自分の守備範囲を超えて、20世紀までのマカエンセ(ポルトガル系マカオ人)の経済活動の報告をしましたが、なかなかの手ごたえをえました。
でも中国近代史があまり勉強できていなくて、誤認識&誤記があったことを、後で指摘いただきました。
これが付け焼刃の怖いところですね・・・。

マカエンセの経済活動自体にはかなり興味を持っていただけましたが、全体議論が商売の構造に集中し、仲買人の役割や投資などの話になり、南蛮貿易のなかでのそういう話は出来るのですが、もっと後の時代のマカエンセの清朝の交易システムのなかでの、商売仕法などはまだよく分かっていなくて、あまり議論に参加できなかったことが残念です。
一応、南蛮貿易の出資構造は、11月に出た本の中で2章分使って書いております。

本の売れ行きはそこそこ良いようで、東大出版会のHPでは、早くも「在庫僅少」になっております。これは本当に購入してくださった方が多くてこうなってるいるのか、あまりにも売れないために出版会が「釣り」で書いているのか分かりません・・・。
売れても印税が入るわけではないのですが、できるだけ多くの方に読んでいただけたらいいなぁと思っております。

マカエンセの報告が好評だったので、このままアジアの土着ポルトガル系のコミュニティの研究をもっと進めたいのですが、今年は末次平蔵を主人公にした17世紀初頭の東アジアの海の話を本にしなければならないので、しばらく細々とサブ的に研究していこうと思っています。

今年前半は、3月に貨幣博物館での講演、5月に東方学会の「東南アジア交易史!」のパネルでの報告と、比較的ゆるやかな活動予定です。
中国での会議にもひとつ呼んでいただいてますが、これは本当は昨年にやるといっていたもので、今年3月あたりに仕切り直しになったのですが、その後情報も送られてきてないし、本当にあるのかな~という感じです。
中国は動き出すと早いですが、何かと事前交渉に時間がかかるようですね。
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# by mihokodesousa1 | 2011-01-10 00:05

書評いただきました

紀伊国屋書店の「書評空間」で、大阪市立大学の早瀬先生に書評いただきました056.gif
ありがとうございました058.gif

詳細はこちら

きちんと要点を押さえた書評をいただき、大満足です。でも、実証主義は生涯つらぬくつもりなので、史料から離れた歴史構築はちょっと難しいです。

最近、マカオの近代史にも目を向けている関係で、オーラルヒストリーの聞き取り調査にも興味があります。
マカセンセの文化はどんどん消滅しつつあるので。
1月8日の研究報告で、少しその成果を報告できればいいなと思ってます。
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# by mihokodesousa1 | 2010-12-25 22:11

イベリア調査3日目:グラナダとコルドバ

インディアスの調査が終わってから、夕方そのままグラナダ行きのバスに乗り込みました。セビーリャ=グラナダ間はバスでも鉄道でも3時間程度です。その日はグラナダに到着して終了でしたが、グループのうち比較的若者(私も含む)は、夜のアルバイシン地区へ出かけました。その夜は非常に寒かったのですが、アルバイシン地区から見た夜のアルハンブラ宮殿は美しかったです。
アルバイシン地区には旧ユダヤ人街があって、ダビデの星が道路のモザイクタイルになっているところがありました。
翌朝、アルハンブラ宮殿とアルカイセリア(昔、外国人商館があった地区)、カトリック両王が眠る墓所などを駆け足で訪問し、午後12時のコルドバ行きバスに乗りました。ちなみにアンダルシアは今回ALSAというバス会社の長距離バスで移動しましたが、インターネットで日本から座席を予約できるので、出発間際にバスターミナルへ行けばいいというのは便利です。

アルカイセリアですが、マニラの中国人商館のことをスペイン語で「アルカイセリア」と呼んでおり、グラナダは唯一スペイン国内で「商館」地域が原型に近い形で残っているところなのではないかと思います。

グラナダとコルドバでは文書館調査はしませんでしたが、大航海時代にアジアへやってきた商人の大半は改宗ユダヤ人(コンベルソ・新キリスト教徒)であったという説も最近実証が進んでいますので、その関連遺跡が残るグラナダとコルドバは外せませんでした。

コルドバには旧ユダヤ人地区があり、シナゴーグも残っています。コルドバは3度目でしたが、前回はどちらも土曜日(シャバット)で、シナゴーグもその近くに最近できた「セファルディ博物館」も閉まっていましたが、今回はどちらもしっかり踏査できました。
とくにセファルディ博物館は、ガイドさんが丁寧に説明してくれるので、イベリア半島のユダヤ人の歴史がよく分かります。コルドバ出身のユダヤ人で、サラディンの侍医だったマイモニデスの展示がとくに充実しています。ほかにセファルディの有名人のリストがあり、その中には、日本イエズス会の布教政策に影響を与えた、「ぎやどぺかどる」などのキリシタン版でも知られる16世紀の宗教思想家でドミニコ会士のルイス・デ・グラナダの名前が含まれています。
最近日本で刊行されたグラナダの研究書では、そのことは全く触れられていないので、ちょっと驚きました。著者のアイデンティティの解明は、文学研究の基本だと思うのですが。
ルイス・デ・グラナダの思想は、16世紀末に日本イエズス会布教長だった科学者のペドロ・ゴメスによって、日本に導入されたのだと思いますが、ペドロ・ゴメスもまた改宗ユダヤ人だったことを示す史料があります。

改宗ユダヤ人とはいえ、その時点では熱心なキリスト教徒ですから、変に「ユダヤ人の陰謀」説など煽るつもりはありませんが、グラナダの著書がいち早く日本で翻訳出版されたのは、グラナダ自身が改宗ユダヤ人であるというアイデンティティにもとづいて、「改宗者のための教義書」作成に熱心だったからに他ならないわけで、そういうところをすっ飛ばして、グラナダの思想や日本での影響を論じるのは、どうかなと思います。
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# by mihokodesousa1 | 2010-12-21 21:17 | 研究の旅

イベリア調査2日目:セビーリャ

カディスには海事博物館はなかったのですが、「海図博物館」はありました。しかしこれは工事中で閉館中。
地方都市の小さな博物館は、インターネット情報もほとんどなく、現地に行ってから地元の人に聞くしか方法がない場合があります。
数年前にビスケー湾沿岸の捕鯨関連施設の調査で、別の科研グループのコーディネーターとして同行しましたが、現地に行くと、博物館以外にも街の紋章にクジラが使われたものが多数あったり、ちょっとしたレストランにも捕鯨用具が飾られていたり、バスクと捕鯨の関わりが体感できました。やはりフィールド調査は大事ですね。

さて今回の旅の重要な目的地セビーリャでは、インディアス文書館に事前から連絡をとっていたおかげで、かなりVIP待遇にしていただけました。
ですが、すでに画像データがネット公開されている史料は、実見できないとのことで、家康や秀忠のレルマ公宛朱印状などは見ることができませんでした。

スペインの国立文書館は、かなりデータベース化が進んでおりまして、インディアスをはじめシマンカスやマドリッド国立文書館の文書はあらかたデータベース化され、インディアスのものに関しては、かなりの部分の画像データがネット上で公開されています。詳しくはこちらから

館員の方に、館内を丁寧にご案内いただき(インディアスには、昔通ったのですが、こんな扱いされたことないよ)、ちょうど特別展示「世界の海賊」があり、主にカリブの海賊中心に、貴重な史料展示を見ることができました。

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その後、事前に予約していた、マニラ=中国関係の漢籍と明代の古地図を見せていただきました。漢籍は18世紀に作成された、ミッション関係のものが多かったのですが、その中におそらく宣教師の使用人としてマニラへ行った華人の本国家族宛書簡なども紛れていて、非常に興味深かったです。
全体の調査報告は、九州大学の紀要にまとめられる予定です。

私の注目はコチラ。これは新大陸などから銀を入れてヨーロッパへ持ち運ぶための複雑な錠前構造を持った箱です。ほとんど同じものを、ハプスブルグ朝スペインの財政を支えたイタリアのジェノヴァの海事博物館で見ました。「スペイン帝国の世界的繁栄」というのは、実質的にはレパント貿易から撤退したジェノヴァなどからの資本投下と改宗ユダヤ人商人の経済活動に支えられたものであったというのは、日本ではあまり知られていませんね。
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# by mihokodesousa1 | 2010-12-21 11:11 | 研究の旅

イベリア調査1日目:カディス

少し前になってしまいましたが、11月のイベリア半島調査報告を少しずつアップしたいと思います。
今回はリスボンのトルレ・ド・トンボ文書館の清代漢文史料がメインの目的でしたが、セビーリャのインディアス文書館にも、中国・日本関係の史料が豊富にあるので、スペインのアンダルシア地方を旅程に入れました。

土曜日晩にマドリッドのバラハス空港へ到着し、翌日曜日はセビーリャへ移動し、そこからさらにスペインの大西洋貿易で栄えた港町カディスへ向かいました。
カディスはフェニキア人の遺跡が多く残っていることで有名ですが、さらにその上にローマ帝国、イスラーム諸王朝が文明を築き、少しモロッコに似た雰囲気のエキゾチックな街になっています。
あやしげなインターネット情報を頼りに、到着してから海事博物館を探したのですが、観光案内所でそういったものはないといわれ、カディスの町の博物館を目指すも、日曜日は午前中のみの開館で、我々が到着したときには、すでに扉が閉まっておりました。

ですが、カテドラルの塔を上ると最上階からキラキラと輝く大西洋が見渡せ、付属の博物館では、おそらく中南米産の銀を使った様々な聖器などを見ることができました。

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この丸いドーム型の教会は、やはりイスラーム文明の影響でしょうか。カディスは旧市街が要塞の中にある、まさに城塞都市です。古代から多くの勢力が占有をめぐって攻防に明け暮れたイベリア半島の重要な港町のひとつです。
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# by mihokodesousa1 | 2010-12-20 16:39

南蛮貿易、大航海時代、マカオ、長崎など


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