
ありがとうございました

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きちんと要点を押さえた書評をいただき、大満足です。でも、実証主義は生涯つらぬくつもりなので、史料から離れた歴史構築はちょっと難しいです。
最近、マカオの近代史にも目を向けている関係で、オーラルヒストリーの聞き取り調査にも興味があります。
マカセンセの文化はどんどん消滅しつつあるので。
1月8日の研究報告で、少しその成果を報告できればいいなと思ってます。
アルバイシン地区には旧ユダヤ人街があって、ダビデの星が道路のモザイクタイルになっているところがありました。
翌朝、アルハンブラ宮殿とアルカイセリア(昔、外国人商館があった地区)、カトリック両王が眠る墓所などを駆け足で訪問し、午後12時のコルドバ行きバスに乗りました。ちなみにアンダルシアは今回ALSAというバス会社の長距離バスで移動しましたが、インターネットで日本から座席を予約できるので、出発間際にバスターミナルへ行けばいいというのは便利です。
アルカイセリアですが、マニラの中国人商館のことをスペイン語で「アルカイセリア」と呼んでおり、グラナダは唯一スペイン国内で「商館」地域が原型に近い形で残っているところなのではないかと思います。
グラナダとコルドバでは文書館調査はしませんでしたが、大航海時代にアジアへやってきた商人の大半は改宗ユダヤ人(コンベルソ・新キリスト教徒)であったという説も最近実証が進んでいますので、その関連遺跡が残るグラナダとコルドバは外せませんでした。
コルドバには旧ユダヤ人地区があり、シナゴーグも残っています。コルドバは3度目でしたが、前回はどちらも土曜日(シャバット)で、シナゴーグもその近くに最近できた「セファルディ博物館」も閉まっていましたが、今回はどちらもしっかり踏査できました。
とくにセファルディ博物館は、ガイドさんが丁寧に説明してくれるので、イベリア半島のユダヤ人の歴史がよく分かります。コルドバ出身のユダヤ人で、サラディンの侍医だったマイモニデスの展示がとくに充実しています。ほかにセファルディの有名人のリストがあり、その中には、日本イエズス会の布教政策に影響を与えた、「ぎやどぺかどる」などのキリシタン版でも知られる16世紀の宗教思想家でドミニコ会士のルイス・デ・グラナダの名前が含まれています。
最近日本で刊行されたグラナダの研究書では、そのことは全く触れられていないので、ちょっと驚きました。著者のアイデンティティの解明は、文学研究の基本だと思うのですが。
ルイス・デ・グラナダの思想は、16世紀末に日本イエズス会布教長だった科学者のペドロ・ゴメスによって、日本に導入されたのだと思いますが、ペドロ・ゴメスもまた改宗ユダヤ人だったことを示す史料があります。
改宗ユダヤ人とはいえ、その時点では熱心なキリスト教徒ですから、変に「ユダヤ人の陰謀」説など煽るつもりはありませんが、グラナダの著書がいち早く日本で翻訳出版されたのは、グラナダ自身が改宗ユダヤ人であるというアイデンティティにもとづいて、「改宗者のための教義書」作成に熱心だったからに他ならないわけで、そういうところをすっ飛ばして、グラナダの思想や日本での影響を論じるのは、どうかなと思います。
地方都市の小さな博物館は、インターネット情報もほとんどなく、現地に行ってから地元の人に聞くしか方法がない場合があります。
数年前にビスケー湾沿岸の捕鯨関連施設の調査で、別の科研グループのコーディネーターとして同行しましたが、現地に行くと、博物館以外にも街の紋章にクジラが使われたものが多数あったり、ちょっとしたレストランにも捕鯨用具が飾られていたり、バスクと捕鯨の関わりが体感できました。やはりフィールド調査は大事ですね。
さて今回の旅の重要な目的地セビーリャでは、インディアス文書館に事前から連絡をとっていたおかげで、かなりVIP待遇にしていただけました。
ですが、すでに画像データがネット公開されている史料は、実見できないとのことで、家康や秀忠のレルマ公宛朱印状などは見ることができませんでした。
スペインの国立文書館は、かなりデータベース化が進んでおりまして、インディアスをはじめシマンカスやマドリッド国立文書館の文書はあらかたデータベース化され、インディアスのものに関しては、かなりの部分の画像データがネット上で公開されています。詳しくはこちらから
館員の方に、館内を丁寧にご案内いただき(インディアスには、昔通ったのですが、こんな扱いされたことないよ)、ちょうど特別展示「世界の海賊」があり、主にカリブの海賊中心に、貴重な史料展示を見ることができました。

その後、事前に予約していた、マニラ=中国関係の漢籍と明代の古地図を見せていただきました。漢籍は18世紀に作成された、ミッション関係のものが多かったのですが、その中におそらく宣教師の使用人としてマニラへ行った華人の本国家族宛書簡なども紛れていて、非常に興味深かったです。
全体の調査報告は、九州大学の紀要にまとめられる予定です。
私の注目はコチラ。これは新大陸などから銀を入れてヨーロッパへ持ち運ぶための複雑な錠前構造を持った箱です。ほとんど同じものを、ハプスブルグ朝スペインの財政を支えたイタリアのジェノヴァの海事博物館で見ました。「スペイン帝国の世界的繁栄」というのは、実質的にはレパント貿易から撤退したジェノヴァなどからの資本投下と改宗ユダヤ人商人の経済活動に支えられたものであったというのは、日本ではあまり知られていませんね。

今回はリスボンのトルレ・ド・トンボ文書館の清代漢文史料がメインの目的でしたが、セビーリャのインディアス文書館にも、中国・日本関係の史料が豊富にあるので、スペインのアンダルシア地方を旅程に入れました。
土曜日晩にマドリッドのバラハス空港へ到着し、翌日曜日はセビーリャへ移動し、そこからさらにスペインの大西洋貿易で栄えた港町カディスへ向かいました。
カディスはフェニキア人の遺跡が多く残っていることで有名ですが、さらにその上にローマ帝国、イスラーム諸王朝が文明を築き、少しモロッコに似た雰囲気のエキゾチックな街になっています。
あやしげなインターネット情報を頼りに、到着してから海事博物館を探したのですが、観光案内所でそういったものはないといわれ、カディスの町の博物館を目指すも、日曜日は午前中のみの開館で、我々が到着したときには、すでに扉が閉まっておりました。
ですが、カテドラルの塔を上ると最上階からキラキラと輝く大西洋が見渡せ、付属の博物館では、おそらく中南米産の銀を使った様々な聖器などを見ることができました。

この丸いドーム型の教会は、やはりイスラーム文明の影響でしょうか。カディスは旧市街が要塞の中にある、まさに城塞都市です。古代から多くの勢力が占有をめぐって攻防に明け暮れたイベリア半島の重要な港町のひとつです。
旅の話はおいおいするとして。
帰路5時間ほど立ち寄ったアムステルダムで、友人とランチのため、2年前にオープンしたアムステルダムの市立図書館へ立ち寄りました。
ちょうどアムステルダム港を挟んで、海事博物館と向かい合う形になっています。
中へ入るとまずピアノがあって、自宅にピアノがない市民が無料で練習できるようになっています。私が立ち寄ったときは、素敵な若い男性がジャズを弾いていました。
1階から3階は、無料でインターネットが使えるパソコンが何台も設置され、2階はとくに音楽のCDやDVDライブラリーになっていて、個人でゆったり音楽や映像が楽しめるような小型ブースもありました。
全体的に北欧のシンプルかつお洒落な内装や家具でまとめられていて、南欧の重厚な雰囲気の図書館とはまったく別な趣です。

館内はティーンエイジャーから大学生くらいの若者が多く、子供連れのお母さんやお年寄りは少ない感じ。日本の図書館とは正反対ですね。若者にとっては、図書館へ来ることが「クール」でかっこいいという意識が定着しているのではないでしょうか。
日本でもこういう取組みがあれば、若者の本やカルチャーへの関心がもっと高まるのではないかと思います。
4階は色とりどりの野菜を使ったサラダバーや、釜焼きのピザ、材料から選べる中華料理などのマルシェ風食堂が入っていて、市民がランチやカフェをゆったりと楽しんでいました。
その彩に感激!携帯カメラで撮影したので、あまり綺麗に撮れませんでした


アムステルダムは町並みも美しいのですが、コンサートや舞台など、市民が気軽に楽しめるカルチャーが充実していて、本当に先進的だなぁと感じます。
日本は文化の洗練度は高いと思うのですが、それを気軽に楽しめるようになっていないのは、誠に残念です。